奈保子様は歌姫で女神(下)

​奈保子様は歌姫で女神(上)​から続きます

彼女はもう5年目ぐらいから実質アーチストっぽくなりました。アイドルの人気はもっても5年というのが通説だったらしく、スタッフたちが路線変更を模索したのかも知れません。本格的な作曲家活動の前なのですが、歌の力がさらにスケールアップして、ボーカルだけでアイドルの枠を外れた感もあります。昭和のアイドルは、スター誕生などのオーディション番組のおかげもあってか、アイドルといっても、歌はほとんど平均以上の実力があって、アイドル=アーチストといえなくもなかったと思うのですが、バリバリの作曲家も兼ねるとか、積極的な海外録音、しかも、当時の最先端のウエストコーストサウンドの米アーチストのデビッドフォスターやピーターセテラやTOTOなどと共演できる力のあるアイドルはぼいなかったでしょう。その意味で、奈保子さんはアイドル→アーチスト転身を明確に行ったのでした。

1986年に『スカーレット』で本格的なシンガーソングライター路線に入ったころから私は彼女を応援し始めましたが、シングルの『ハーフムーンセレナ―デ』や『十六夜物語』などの名曲に酔いしれる個人的な楽しみは得られたものの、典型的なカワイ子ちゃんアイドルが本格的なシンガーソングライターになるというあまり前例のない事象や、年間の作曲家大賞の候補10曲に選ばれるとか(十六夜物語)、世界のポピュラーコンクールで何個も賞を受賞するなどの実績を積んでも、世間は評価をしてくれなかった印象は得られませんでした。三作目の『Members Only』の各種音楽誌でのレコード評など漁って読んだ記憶がありますが、そこそこの評価ーアイドル出身のシンガーソングライターへの華麗な転身というよりも、アイドルなんか音楽的に評価したら評論家の名が廃るという防衛姿勢が見え見えでした。私はかねてから、日本は評論文化が弱いなぁと思っていましたが、その傾向はその頃以前も、いまも改善されていないですね。

4作目で、吉元さんとのコンビのマンネリ化(新鮮さが薄れるという意味)を制作者側が恐れたのか、作詞者を変更してからは、ファン離れが進んでしまった気がします。ファン離れというよりは、ファンが社会の中心層になっていくころで、自然なアテンションの減少だったと推測します。私もそうだったので(奈保子愛は消えるものではないのです)。今聴くと、4作目以降の『Calling you・・・呼びよせられて・・・』『ブックエンド』『engagement』は、彼女のそれ以前の作品と比べて音楽的には遜色ないのです。ただ、詩の世界が、彼女が歌うという点で、方向が定まらなかったと感じるところはあったかも。1989年から1993年6年でこの3作、1997年に活動休止するまでアルバム制作なし。『Calling you・・・呼びよせられて・・・』は3作目の西海岸録音の意欲作だったのですが、この頃から本当に売れなくなったのだと思います。アーチストは売れなくなると、転げ落ちるように活動が縮小してしまうものですね。1989年以降の彼女の活動に関して、私は客観的にこんなふうに考えます。1996年に結婚して、翌年にお子さんが誕生、そして、憧れのオーストラリアへの移住。音楽への情熱は強く、ありあまる才能を生かせなかったのは不完全燃焼だったと思うのですが、一方で、もともと保母さんになりたかった奈保子さんにとって、16歳から緊張の続く芸能活動を休止して、ありきたりの日常を送る才能が生かせたことのほうがメリットは大きかったのではないかと。1993年から数えると30年間弱、音楽創作は十分できなかったものの、一度、ピアノだけの演奏の新作を出したり、コロムビアが積極的に多くのコンピレーション企画盤をだしてくれたりで、ファンにとっては彼女が残してきた作品の深堀ができたりして、案外、貴重な音楽の愉しみ方だと思えます。奈保子さんが作曲家でいるおかげで、まだ、これからでも彼女の音楽を聴ける可能性は非常に大きかったり、才能のある娘さん(kahoさん)の活動再開も期待できます。こんな経歴のアーチストって超レアではないでしょうか。

1990年代は、奈保子さんにとってはかなり葛藤がある日々だったと推測しますが、お相手の金原さんに出会ってからは、デビュー前の河合奈保子(なほこ)に戻って、人生をつなぎ直したように見えます。近い将来、その延長で、自然に無理せず、音楽の世界に戻って、日本が明るかった80年代のように、活気づけてくれるといいですね。

最後に、奈保子さんのアルバムを真剣に聴いたことがない人は多いと思うので、私なりに、2つほど推薦したいと思います。(前述の『サマーヒロイン』『さよなら物語』に加えて)


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