『約束の日』読みました

小川榮太郎著『約束の日 安部晋三試論』を読みました。2012年8月に幻冬舎から単行本で刊行されて、翌年2013年には文庫になっています。安部さんが7月8日に凶弾に倒れて亡くなった直後の7月15日に緊急増刷されたものを買いました。

この本は、2006年9月、第一安部内閣が誕生してから、ちょうど1年後に辞任した9月26日までを描いています。福田、麻生、悪夢の民主党政権を経て、第二次安部内閣が誕生した2012年12月のちょっと前にこの単行本が出たので、その時点では、まだ、安部さん復活の胎動時期で、あとがきでその動きが少し記述されている程度でしたが、文庫本が出た2013年にはすでに安部さん再登板となっていたわけで、文庫本あとがきでその雰囲気が感じられるという、今から思えば、非常に流動的な中で出版された本だったということです。

この第一次安倍政権から第二次安倍政権の期間、私が、政治をどのように見ていたか、あまり記憶がないのです。安倍政権の前が4年半近くに渡る小泉政権。当時、私は小泉さんが好きで、全面支持していました。小泉さんに関しては、首相になるかなり前、小沢一郎が推進した、選挙制度を中選挙区から小選挙区にすることに対して、そんなことをしたら大変なことになると猛反対していて、小選挙区に賛成していた私からすると、私が支持する理念を持っていたと思われる政治家たちと異なるところにいる政治家でしたが、主張のしっかりしたところを評価していた経緯もありました。ちなみに、小選挙区制にしたのは大失敗でした。小泉さんの主張は(その根拠は分かりませんが)正しかったのです。その小泉さんから地位を禅譲された形の安倍政権の誕生だったので、期待は最初から最高だったのは間違いありません。ただ、この本で語られる、第一次安倍政権で成立させた数々の政策、法律とその意義の印象は非常に薄いと感じました。2006年7月は我が家に長男が生まれて子育てが大変で、関心が政治に向きずらかったのかもしれません。子育て(妻サポート)に追われながら、安部さんに戦後レジームからの脱却はお任せした感覚で、実際に、バリバリ改革を進めてくれているのを横目で見ていたというところでしょうか。

小川さんが紹介してくれている第一次安倍政権下の通常国会で成立した法案は以下とあります。

  • 6兆3千億円の財政健全化を達成した予算案
  • 憲法改正のための国民投票法
  • 在日米軍再編特措法
  • 教育改革関連3法
  • イラク復興支援特別措置法改正案
  • 社会保険庁改革関連2法
  • 年金時効特例法
  • 公務員制度改革関連法

この中で特に国民投票法は、憲法改正を阻止したいスタンスの野党から、天下りを制限する公務員制度改革関連法は既得権益を害される官僚たちから陰に陽に妨害がされるような大きな改革法案だったと思うのですが、これをよく通したものだと、この5年ぐらいの政治を見ていると思わざるを得ません。小川さんによると、多少強引な戦略を取りながら、それを推し進めた安部さんの強い意志が、これを達成できた力の源であると読み取れました。

第一次安倍政権で成し遂げた成果がその後の日本に良い影響をもたらした部分は多くあったと思いますが、この苛烈な戦いによって安部さんの健康が損なわれ、政権が倒れ、その後の民主党政権誕生や、その間、国力を増強させた中国や、ディープステートによる日本への工作で、日本の大きな根幹が破壊されました。第二次安部政権は誕生しましたが、新しく生まれた多くのハンディキャップの中で、妥協をしながらの政権運営は、極めて困難なものだったと思います。

安部さんの類稀な政治家としての力量が分かると共に、日本を世界からの侵略の中で日本らしく生き残らせることの困難さも改めて考えさせてくれる一冊でした。

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