哲学をもって大災害に備える
内閣官房参与の頃から防災、減災を必死に訴えてきた藤井聡京都大学大学院教授が、昨年の2022年11月26日に京都大学で開催された京都大学レジリエンス・フェスティバル2022(主催:京都大学レジリエンス実践ユニット 共済:月刊『表現者クライテリオン』)というシンポジウムにて、京大の先輩や同僚と共に、日本の防災待ったなしの状況について討議した様子をYOUTUBEで見ることができました。このYOUTUBEの動画には、あまりこのシンポジウムについての解説の記載がなかったのでネットで調べたところ、上記のシンポジウムの一部であることがわかりました。このシンポジウムの全体像はここで確認することができるとおり、シンポジウムの4つのレジリエンスのテーマがあるうちの2番目の『自然災害レジリエンス』の模様の収録した動画でした。ランニングタイム1時間20分の結構な長尺です。空虚な防衛増税騒ぎの中でもちらっと書いたのですが、私は南海トラフ、首都圏直下地震、富士山噴火が発生する可能性が現実のものとなっている日本において、これらの巨大自然災害への準備を行うことは何にも優先する政治・行政の課題だと思っています。もっとも、私がそう思うに至っているのは、藤井さんの話をYouTube番組 だったり、ラジオ番組だったりの藤井さんの出演される番組で先生の話を通して聴けたからであって、先生の話を聴けばバカだってそう思う筈だ、というレベルのあまりに大きすぎる問題であるので、私の受け止め方が独自のものではありません。日本のような自然災害が2000年以上の歴史の中で何十回、何百回・・(定義の仕方が回数は決まると思います)と起きている国において、防災は最優先事項であるのは議論の余地がないのです。ところが、このブログで何度も書いているとおり、日本は、私が生きて来た50年を超える年数の期間でさえ、まともな防災対策を打ってきたことも検討していることもして来ていません。藤井さんのような防災の権威であり、内閣にも入ったような影響力のある人が重ねて主張しても、反応がないと、このシンポジウムの中でも怒りを込めて言葉を発しています。とにかくこの動画を見ましょう。
日本を滅ぼす三大巨大災害~政府はカネより国民の命を守れ!(鎌田浩毅×清野純史×大西正光×藤井聡)
このシンポジウム全体は、「外交・安保レジリエンス」「自然災害レジリエンス」「パンデミック・レジリエンス」「経済レジリエンス」で構成されていて、いずれも藤井先生が強く発信している分野がトピックなので、自然災害以外のパートも藤井さんが司会を行ってファシリテートしているものと思います。「自然災害レジリエンス」では、鎌田浩毅氏、清野純史氏、大西正光氏の3名の方がメインにそれぞれの立場でプレゼンされています。この中で、鎌田京都大学名誉教授は、唯一、藤井さんよりも年長(藤井さんは54歳)の方で、私は初めて知る方でしたが、説明も上手で、人文の世界にも造詣の深いところが伺えて、とても印象に残りました。中でも、思想・哲学と防災に通じる話。デカルト・スピノザ・ライプニッツ・カントという名前が出てきて、私の教養と能力では、この内容を正確に咀嚼して伝えることは出来ないのですが、行きつくところとしては、思想・哲学が生き方や死生観を形成し、その生き方・死生観が、防災への考え方を決めるみたいなものと思いました。また、1755年にポルトガルで発生したリスボン地震に言及して、この大災害が思想・哲学を変えたといい、カントは防災に関する本まで出しているとのことでした。自然災害が思想・哲学に関わることというのは、全然連想しないことでしたが、何万人・何十万人とかの命に関わる大災害というのは、確かに、地球レベルの話でもあり、現在の環境問題にも行きつき、環境問題が、生命・生きることをどう考えるかで捉え方が変わるものであるということから、同じように災害への向き合いかたは、哲学の世界に通じるのは当然のことと思えました。
現代日本人は戦後のGHQの洗脳に侵されて哲学とは無縁の生き方をしていて、それなので、予想される大災害への備えも出来ないのかなと、今回の話を聴いて、考えてしまいました。そうは言っても、多くの国民に、いきなり哲学から防災を考えろとは言えないとは思います。まずは、予想される大災害は、地域的な被害に留まって、その地域以外にいる自分には影響ないとは絶対に言えないということを理解してもらい、多くの国民から政治・行政に対応を働きかけるアクションが必要と思います。まして、予想される大災害のひとつは、首都圏直下型地震、そして、富士山噴火であって、日本の一極集中の大都市、東京に影響するものです。そしてこの影響は、日本の国力を半減させるレベルのものと思われます。いつ来るか分からないものなので現実感を感じないで過ごすような、現在の、今だけ金だけ自分だけ的な生き方を止めて、2000年以上、国家を存続させてきた日本を子々孫々まで残す発想に切り替えて、総力で対応すべきときと思います。