身も心も美しい若尾文子さん
本日は統一地方選の投票日、特にこの1週間は、地元の杉並区議候補の横田さんを中心に党員仲間と後悔しない闘いをしてきました。天照大神のご加護がありますように。そんな時ですが、今回は文化的テーマにします。日本の美しい文化の天照大御神のような方のことです。
息子の通う高校に毎月の課題図書というのがあって原則読破することを課しているカリキュラムなのです。ちょっと前の課題が、源氏鶏太さんの『青空娘』でビックリしたものですが、購入したちくま文庫は永久保存版として私のライブラリに収まりました。そして、最近は、フィクションは時間を取れなくてなかなか読めないのですが、この本は、頭だけチラッと読み始めてしまい、そうしたら最後まで読んでしまったのでした。元々が大衆小説なので、軽く読めるのですが、この原作は私には特別なのです。主人公は小野有子と言って、四国の高校を卒業したばかりの若い娘です。原作と私が書いたのは、実は、これは映画化されていて、監督が増村保造、そして、有子は、若かりし頃の若尾文子さんが演じていました。学生時代から文子さんの熱烈なファンをしていて名画座やら、テレビの名作映画劇場のような番組などで追いかけていたので、彼女のある意味で代表作たる『青空娘』はもちろん見ています。原作を読んでいると、有子が文子さんの溌剌とした姿で生き生きと頭の中に映像化されるのでした。懐かしいやら、激しく共感するやら、切なさも感じたりして、不思議な時間を過ごしました。
本の青空娘 ⇒ ココ
青空娘の予告編 ⇒ ココ
そんなことがあって、ここで歌の河合奈保子さんのように、映画で私に多大な栄養を与えてくださった若尾文子さんについて私の思いをまとめてみたくなりました。ちなみに文子さんは私の母より1歳年齢が下の昭和8年生まれ。母親と同時代の方に対してアイドルのように関わってきたのも不思議というか、録音や録画という技術の賜物なのでしょう。
そもそも、私の文子さんファンの始まりは、まさしく取っ掛かりとして、子供の頃好きだった西城秀樹の好きな女性タレントとして挙げたのが文子さんで、若尾文子ってどんな人なのだろう、と多いに興味を持ったこと、それから随分経って、当時の東京12チャンネルの日本映画名作劇場という番組で、『妻の日の愛のかたみに』という彼女の主演作が放送されたのを見てから一直線で好きになりました。この作品、文芸作品ですが、決して彼女の代表作ではないものの、文子さんの声やセリフまわしの上手さ、それから日本的な女性美に加えた、物語上のその薄幸な女っぷりで、なかなか印象に残る作品でした。それからは、絶品と言ってよい吉村公三郎監督の『越前竹人形』、文芸坐2だったかで開催された溝口健二特集で見ることができた『祇園囃子』、『赤線地帯』、銀座の名画座だったかの小津さん特集で見た『浮草』、とか見進めて行きました。若尾文子さんという女優さんは、『青空娘』で見られるように、きっと若者たちのアイドル的な存在だったに違いない若く可愛く健康的なスターだった頃、そして、妖艶な、いかにもスクリーン上でしか見られないようなキャラクターを作り上げる稀有な演技力を持った実力派女優という、ひとりの人物ではなかなか繋がらないような2つのキャリアを長い期間に持った世界でも有数な存在なのではないかと今は強く思います。日本では他には吉永小百合さんぐらいでしょうか。
文子さんが所属した大映は倒産してしまい、いろいろ経緯があって、大映で制作された映画は、現在、かつての角川書店、現在のKADOKAWAが版権をもっています。有難いことにKADOKAWAは大映の遺産を精力的にDVD化してくれて、現在はかなりDVDで文子さんの出演作を見られるようになっています。そして、一方で、KADOKAWAは、角川シネマ有楽町のような映画館を経営していて、もう8年前になりますが、若尾文子映画祭と称して、文子さんの代表先を集中的に上映する企画がありました。東京での開催場所は、今はEJアニメシアター新宿というアニメ専門の映画館の前身だった角川シネマ新宿。2000年代に入って、文子さんが齢82歳という時期に、このような映画祭が開催されるというのは想像もしないことでしたが、文子さんの日本映画界というか日本の近代文化において残したものはそれだけ大きなもので、彼女のユニークさというものを証明するものと思いました。ちょうどこの頃、ワイズ出版から『若尾文子 “宿命の女”なればこそ』という書籍も出版されました。何というのでしょう、映画関連だと、監督や俳優さんをまるまるフィーチャーした単行本が多くありますが、そういう一冊です(文子さんの場合、その前後にも同様の本があって、私はこの書籍を含めて三冊持っています)。映画祭が開催されて、書籍が出版されたこの頃、静かなるブームだったようです。理由は、今も分かりません。ちなみに、この『若尾文子 “宿命の女”なればこそ』ですが、新宿の紀伊国屋でサイン本がおいてあるということで、私はこのサイン本を手にいれることができたのです。あまり有名人のサインに執着はないのですが、考えてみると尊敬する文子様が直に手に取ってサインされた本を所有できていることは凄いことです。私の最高の宝物と言えるでしょう。
『若尾文子 “宿命の女”なればこそ』 ⇒ ココ ※表紙は『青空娘』です
つらつら書いてきましたが、文子さんに関してひとつだけ理解できないことがあるのです。若尾文子さんは、これまで叙勲を受けていません。これの理由は何なのか。彼女が特別な思いで叙勲を辞退してきたのか?過去の政府が文子さんを叙勲対象にしないということは考えられないのです。何とか知りたいとずーっと思っている謎であります。
せっかくなので、日本文化の宝ものの写真を貼り付けておきます。