戦後日本の良き時代の象徴
参政党で活動し始めてから、より住んでいる地域を意識し、限りなく学ぼうとするようになりました。私の場合は杉並区になります。杉並区に移ってから15年以上経ちます。それまでに住んだ土地はいろいろあり、もちろん杉並よりも長かったりして、どこも愛着はあるのですが、これほどまでに市や区という単位で知り尽くそうとしたことはありません。これは政治活動とは関係なく、時間の余裕ができたからという理由が大きいのかもしれませんが、政治で成果を出すためには地元の地域との密着は欠かせないのです。
杉並の風土、文化、歴史などを知る上で一番役に立つのは、杉並区立郷土博物館です。郷土博物館は杉並の大宮という地区にあり、これが本館、さらに、荻窪地区に分館があります。本館は、最近も観覧しましたが、ほどほどの規模で、一度で見つくすには情報量は多すぎ、何度か足を運んでほぼ見つくせるという感じでしょうか。最近ブームの縄文時代ですが、杉並にも多くの縄文時代の遺跡があり、杉並の歴史の常設展示では縄文時代の展示や説明が充実して、このあたりは何度も訪れて学んでみたいエリアです。もうひとつの荻窪にある分館はこじんまりした施設なので、常設展示は少ないです。従って企画展示が目玉となりますが、企画展示は本館でも目玉であり、これはたえずチェックして興味のあるところは見逃さないようにしないといけませんね。
そんな企画展示ですが、過去にあった企画の名残りを先日、分館を訪れたときに発見しました。企画展示の際に制作したブックレットのようなものが販売されているのを見つけたのでした。それは、『杉並にあった映画館』そして『Montage ’30~’60 Suginami -映画にうつされた郊外-』です。後者が古くて平成17年開催の企画、前者が平成27年の企画です。後者は、映画の撮影の舞台となった杉並区の地域を紹介しつつ、いろいろ映画にまつわるエッセイが掲載されています。これは読み物としてとても面白いです。前者は、映画全盛期における杉並にあった映画館を変遷とともに回顧し、当時の写真に加え、A4サイズの大きさでこれらの映画館で上映された映画のポスターをカラーで掲載してくれています。これはノスタルジーに耽ってしまう一冊ですね。これが共に400円で販売されていて、今の価格感でいうと、ものすごく安いと思えます。今いま制作して販売すれば千数百円というところでしょう。
私にとっては、なくなってしまった映画館の体験は、本当に小さい子供のころに行った映画館ということで東京都北区の赤羽の映画館が実体験です。今行ってももちろん映画館はないわけで、正確な映画館のあった場所は分からないのですが、たぶんこのあたりという位置は何となく分かります。赤羽にいくつ映画館があったかも記憶ではありませんが、子供のころに観た映画なので、ゴジラとかガメラの特撮映画だけしか行っていません。ですので、行った映画館はたぶんひとつだけでしょう。まだ、幼稚園児か小学1,2年生のころなのですが、親とゴジラの映画を見に、繁華街を歩く大勢の人に交じって映画館に向かうシーンはうっすら覚えているのです。これは、映画館へのノスタルジーというよりは、無邪気だった幼児期へのノスタルジーに近いのかも知れません。
『杉並にあった映画館』に載っている映画館の数々。私は行ったことのない映画館ばかりですが、大学生時代に「ぴあ」を毎週買って、映画館でかかる映画のチェックなどもしていたので、中央線沿線の映画館の名前は何となく憶えています。今、阿佐ヶ谷や荻窪にいても映画館を一館も見ることはできません。冊子にはすべての多くの映画館がリストされていて、本当にこんなに多くの映画館があったのだなと思わされます。テレビが映画を駆逐したと言われていて、それは間違いないでしょう。これも私が小さい頃というか、10代のころ、テレビで映画を毎日のように観ていました。当時、映画、特に洋画の旧作はテレビ局にとってメインコンテンツだったのです。その意味においては、テレビで映画を気楽に観られるのですから映画館の映画が駆逐されたのは仕方なかったでしょう。そして、テレビにはもうひとつ、というか映画以上に大量の連続ドラマが制作されて放映されました。勝負にならなかったでしょうね。
時代がさらに進んだ現代、映画を観る環境は、(皆がそうではありませんが)4Kや8Kのモニタとサラウンド音声機器を揃えたネットの映画配信サービス VS シネマコンプレックスという対決になっています。シネマコンプレックスができて、スクリーン数という意味では映画館は復権して来た状況です。ネットでの映画鑑賞という意味では、今や、電車の中でスマホで映画鑑賞している人も多く見られ、その意味では、昔と比べると日本人が観る映画の数って、劇的に増えているかもしれません。こう考察してみると、映画ほど時代で意味合いや環境が変遷してきたエンタメコンテンツはなかったと言えそうです。
定年を迎えるような年齢になると昔を懐かしんだり、以前の趣味が復活したりなどって、自分の経験からは多くあるだろうと推測されます。今回偶然に見つけられた高度成長期日本にあった映画館の記録は、そういうレトロ回帰の私にはとても嬉しい出会いでした。なくなってしまったのは必然で仕方がないことかもしれませんが、こうして記録を正確に適切な量で残して行くことが大事だと思います。
以下、冊子から一部スキャンさせてもらいました。著作権違反かな?
400円と破格値なので、興味がある方は購入をお勧めします。